PMI — ベトナムでの現地企業経営経験 その1

仕事

PMI(Post Merger Integration)、私は20代後半から30代にかけて海外も含めて、複数のPMIに携わった。簡単に積める経験ではないと思うので、とても幸運だったと思う。本などは抽象的にしかまとまっていないので、私は自分の経験を元に残しておきたい。

コンサルタントとして、業務担当者として、そして現地経営者として

私がPMIに初めて関わったのは、コンサルタントとして働いていた時、大手部品メーカーが買収した子会社の意識改革案件にアサインされたこと。2つ目もコンサルタントとして、消費財メーカーが外資系の専門メーカーを買収した後の戦略構築案件に携わった。

3つ目は自らが所属するサービス業の会社で、中国法人を合弁で立ち上げる際、業務統合の現場を任された。4つ目もサービス業で、ベトナムのローカル企業2社を買収した際、経営&業務統合を現地経営者として任された。

実際、PMIの業務は、短期間に集中して成果が求められるので、その間はとても消耗する。でも、私はこのダイナミックな仕事が好きだ。今は別の仕事をしているが、機会あればまた携わりたいとも思う。

最初こそ偶然アサインされたが、それ以降、そのダイナミクスさ、複雑さの上に、スピードが求められること、毎回新しい展開が待っていること、にやりがいを感じ、自らそのような案件を探し掴みに行った。

そして、4つ目のベトナムでの2年間の経験は、私の人生観を大きく左右した素晴らしい経験だった。若い時の苦労は買ってでもしろ、とはよく言ったもので、この経験は私を強くしてくれたと思う。

買収段階のいつから業務に入る?

日本M&Aセンターの定義では、PMIは「合併後の統合」ではなく、「資本提携後に売り手企業と買い手企業がともに成長する過程」と表されている。また、M&Aの成果は、戦略的整合×経済的合理性×PMIと言われているほど、PMIの重要性は大きい。

そのM&Aが、いかに戦略的にはベストマッチで、経済的合理性もうまく捻出できても、PMIで失敗すれば、掛け算なので結局失敗だ。

私自身が、ベトナムで現地経営を任された際の案件の関わり方としては、外部の専門家が主に事業、財務、税務、法務のデューデリジェンス(Due Diligence)を済ませ、基本合意が成されるタイミングで入る形だった。

初めての面会では、重厚な部屋、両社が友好的な雰囲気を醸し出そうとする緊張感ある雰囲気、紙資料の山、弁護士の淡々とした説明に緊張したのを覚えている。

具体的に何をするのか?

100%完全子会社想定の買収先に部長職で1ヶ月ジョインし、その間にDDでの検出事項のキャッチアップ、現場業務を事業環境、業務プロセス、人事、システムなどから多面的に把握、1ヶ月後には取締役に就任し、統合方針をランディングプランとして出し、おおよそ3ヶ月程度で中長期の経営計画に落とし込み、1年で経営統合を完成させ、2年で単年黒字を達成すること。

これが私に課せられたミッションだった。結果的に、1年目途中で代表取締役副社長として、経営全般を担うようになったが。

最初の壁。実態は何処?

新興国ならではなのか、買収先が中小企業だったからなのかはわからないが、一番最初に苦労したのは実態認識だった。買収額の支払いは分割して行われるので、まだ大半の支払いが残っている状態での現場ジョイン。

渡された経営関連資料は、DDを乗り切るために作成されたものだということは、ジョインしてすぐにわかった。業務プロセスや人の動きとあっていないのだ。また、一般人の給与数ヶ月分に当たるような、ある程度高価格帯の商品を扱っているにも関わらず完全現金商売。そうなると、現金を確認したくなるのだが、銀行口座に加え、金庫が複数あり、会社には小口現金しか置いていないとのことで見せてもらえない。

既存社員からは、懐疑的な目でみられ、余計なことを言ってはいけないという雰囲気が漂っており、質問しても答えをはぐらかされるなどで、会話にならない。資料も出してもらえない。用意された通訳も役に立たない。

果たして、誰が味方なのか、一人で送り込まれたのでその時点で味方はいないとして、誰を味方につけられるのか。。これじゃ業務が進まない。かと言って、強制的に突っ込むのも今後事業をともに成長させる仲間として認めてもらえない。

創業社長と腹を割って話せるようになりたい

色々考えた後、やはり自分らしくこの会社にコミットしよう、腹を割って話せるようになろう、と決心した。そのためには、会社を売って退任されるとはいえ、創業社長の影響力は計り知れない。彼女の協力なしでは現場にも近づけないと思い、毎日彼女を食事に誘い、色々な話をした。

生い立ちから大学の専攻、その後のキャリアや結婚、子供、好きな服、思い出の場所、将来の夢など、できる限り会社ではなく、まず彼女を理解しようとした。その分、私も自分のことをプライベートも含めてたくさん話した。

2週間ほど経った日に、彼女の口から会社の話がようやく出てきた。なぜ立ち上げたのか、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか、どうしたいと思っていたか。DDの資料や弁護士から聞いていた内容はもちろんあるものの、とても綺麗すぎてどうもピンと来ていなかったので、このときは話せて本当に嬉しかった。後から振り返ると、このとき出てきた課題は、全て話してくれていた訳ではないのだが、それでも私は、少し会社の輪郭が見えた気がした。

そして、3週間目にして彼女は、私を仲間だと言って社員に紹介してくれ、自分が使っていた社長室の机と椅子に私を座らせ、自分は翌日から会社には30分程度しか来なくなった。その代わり、財務経理の役員(これまた女性)に私の質問に全て答えるよう、指示をしてくれた。これも、あとで振り返ると、まだ秘密にされていたことはあったのだが、それでも十分懸命に対応してくれた。

まだまだ書きたいことがありすぎるので、その1はこの辺りで終えておきたい。その2は、営業許可ライセンス、経営管理資料の整備、ビジネスモデルへの悩み、あたりを書きたいと思う。

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