『ビジョナリー・カンパニー2』ーー 飛躍の法則

学び

英語名では、Good To Great(良好は偉大の敵である)。私はこの本を少なくともこの10年間で5回は読んでいる。それだけビジネスにおける色々な場面で使用されることが多い書籍。世界的に偉業を成し遂げた企業の共通項は何か、飛躍の法則は何か、を大規模比較調査を経て解き明かしている。

優良企業の話ではなく、偉大な企業の話である。そこそこ良い実績から偉大な実績へ飛躍をとげ、その実績を少なくとも15年にわたって維持してきた企業が選ばれている。転換点から15年間でみた株式の平均運用成績は市場平均の6.9倍。(これは20世紀末の時点で経営が最も優れている米企業だとされたGEですら2.8倍に過ぎないことが記されている)

良い企業は偉大な企業になれるのか、どうすればなれるのか、どの組織にも適用できる普遍的な答え、時代を超えた答えの追求をテーマとした本である。

今改めて読み直してみようと思ったのは、これまでの仕事人生20年を振り返って、次の20年に向けて今、自分を整理している真っ只中だから、何か示唆をもらえるかもしれないとの期待からだ。また、この本はすでにロングベストセラーだが、私がコンサルタントになった当時に読んだ10年以上前と比べて学びが異なるか、違う観点で読めそうか、なども気になっている。

今、自分の視点で重要だと思うところを改めて、書き残しておきたい。

誰をバスに乗せるか?

やはりこれが最初にくる気がする。つまり、最初に人を選び、その後に目標を選ぶ。

目的地を決め、次に旅を共にする人々をバスに乗せる方法を取るのではなく、まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきか決めている。

何をすべきか?ではなく、誰を選ぶか?から始めれば環境変化に適応しやすくなる。バスに乗ったのは目的地が気に入ったからであれば、途中で目的地変更をしたら問題が起きる。だが、バスに乗ったのは同乗者が気に入ったからであれば、行き先を帰るのは簡単だ。また、適切な人がバスに乗っているなら、動機付けや管理の問題はほぼなくなる。

不適切な人たちばかりであれば、正しい方向がわかり、方針がわかっていても、偉大な企業にはなれない。偉大な人材が揃っていなければ、偉大なビジョンは意味がない。

  • 疑問があれば採用せず、人材を探し続ける
  • 人の入れ替えが必要だとわかれば、行動する
  • 最高の人材は最高の機会追求にあて、最大の問題解決にはあてない

ハリネズミの概念

「ハリネズミと狐」の寓話になぞられてハリネズミの概念が使用されている。狐はたくさんのことを知っているが、ハリネズミはたったひとつ、肝心要の点を知っている、に基づいたもの。

狐が複雑な作戦を次々に思いつき、ハリネズミを不意打ちしようとしても、冴えない動物のハリネズミが身体を丸めて、小さな球のようになり、鋭い針を様々な方向に突き出していつも勝利する。ハリネズミは本質を知っている。どれほど複雑なことでもシンプルに肝心なところを理解する。

ハリネズミの概念は、単純で明快な概念であり、以下の三つの円が重なる部分い関する深い理解から導き出されている。

  • 自社が世界一になれる部分はどこかーーコアコンピタンスがどこかよりもはるかに難しい、世界一になれるか
  • 経済的原動力になるのは何かーー具体的には財務実績に最も影響を与える分母をたった一つ選んで、Xあたり利益、と落とし込めている
  • 情熱を持って取り組めるのは何かーーどうすれば熱意を刺激できるかではなく、どのような事業なら情熱を持っているかを見つけ出す

ハリネズミの概念とは?ーー最高になれる部分はどこか?についての理解のことだ。

促進剤としての技術

飛躍した企業は、技術の流行に乗るのを避けているが、慎重に選んだ分野の技術利用で先駆者になっている。

その技術が自社のハリネズミの概念に直接に適合しているか? この問いへの答えがYesなら、その技術利用で先駆者になる必要がある。

技術は適切に利用すれば業績の勢いの促進剤になるが、勢いを作り出すわけではない。偉大な業績に飛躍した企業が先駆的な技術利用によって、転換を始めたケースはない。しかし、三つの円を理解するようになり、業績が飛躍するようになった後、どの企業も技術利用で先駆者となっているのである。

劇的な転換はゆっくり進む

最終的な結果がどれだけ劇的であっても、偉大な企業への飛躍が一気に達成されることはない。巨大で重い弾み車を回すのに似て、最初はわずかに前進するだけでも並大抵ではない努力が必要だが、長期にわたって一貫性を持たせて一つの方向に押し続けていれば、勢いがつき、やがて突破する。

第5水準のリーダーシップ

以下読むとわかるが、決して第4水準までが低いわけではない。優秀と呼ばれる人々である。だが、第5水準のリーダーがいる企業が偉大な企業だったとの比較調査結果である。

第5水準 第五水準の経営者:個人としての謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる

第4水準 有能な経営者:明確で説得力あるビジョンへの支持と、ビジョン実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える

第3水準 有能な管理者:人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追求する

第2水準 組織に寄与する個人:組織目標達成のために自分の能力を発揮し、組織の中で他の人とうまく協力する

第1水準 有能な個人:才能・知識・スキル・勤勉さによって生産的な仕事をする

そして、今これらの偉大な企業はどうなっているのか?

本書で取り上げられた会社は11社。

ウェルズ・ファーゴ、ニューコア、クローガー、キンバリークラーク、ウォルグリーンズ、アボット、ファニーメイ、ジレット、フィリップ・モリス、ピットニー・ボウズ、サーキット・シティ

日本人には馴染みのない会社も含まれている。著者らは、過去35年に遡って資料を集め、これらの企業に共通する要素を競合企業と比較を通して、分析している。2001年出版なので、そこから20年。今の業績について気になったので調べてみた。

まとめていた記事を見つけた。2017年の記事で英語だが原文はこちら

以下の表の通り、2017年時点で、11社中、2社(フィリップ・モリス、ニューコア)はスター。2社(クローガー、ウェルズ・ファーゴ)は市場より2%業績良し、4社は平均的(ジレット、キンバリークラーク、アボット、ウォルグリーンズ)、3社は市場より5%以上業績低い(ピットニー・ボウズ、サーキット・シティ、ファニーメイ)。

これをどう見るかだな、と思う。さらにそこから3年経っている現在、自分では調べていないが、状況変わっている可能性もあるはず。企業は永続的に存続するわけではない、どんなに素晴らしい偉大な企業でも、経営者が変われば、もしくは経営者が変わらなくとも、何かしらの時代の影響、淘汰を受けるんだなと感じさせられる。

永遠に正しいことは存在しない、ダーウィンの進化論「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」はやはり名言。

とはいえ、本書からの学びがなかったことになるわけではない。一定期間偉大な企業であり続けることはなかなか成し遂げられるものではなく、上記の共通項については、普遍的な学びだと思う。

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